虻虫(ぼうちゅう)について

　虻虫(ぼうちゅう)はアブ科のアブ属の昆虫の雌成虫の全乾燥体です。神農本草経の中品に収載されていあります。生薬「虻虫」としては、採集地や採集時期、産地等の違いにより、多数の種類のアブが基源となります。雄の成虫は吸血せず、雌のみが吸血性であるため、生薬はすべて雌の成虫に由来します。捕獲後は日乾または陰乾し、その後、脚、翅を取り除き、炒ってから用います。
　虻虫(ぼうちゅう)の有効成分は未詳だがアルコールや水性エキスには血液凝固阻止作用や溶血作用がある。「婦人の月水不通、積聚、賊血（オケツ）の胸、腹、五蔵にあるものを治し、喉痺の結塞を除く」働きから通経、駆オケツ薬として用い、月経閉止、胸腹中の蓄血などに応用されます。ヒル同様、強い破血効果があるため堕胎を目的に使われることもあります。したがって妊婦には禁忌であります。虻虫を配合している方剤に、抵当丸、抵当湯（『傷寒論』出典）や大黄シャ虫丸（『金匱要略』出典）などがあります。

※採集方法は、牛や馬にたかったものを昆虫採集用のたも網などを用いて、虫体を抑えて潰さないように注意しながら捕獲します。市場品の約半数の個体に潜血反応が認められたという報告があることから、吸血行動中や吸血後に捕獲されたものと考えられます。